アンダー・ザ・クロス

わたしは今日もそこへ向かう。



わたしは門を通りすぎる。
風がわたしを迎え入れる。
森を過ぎて教会がある。
そこは教会の奥にある。



わたしの胸には
あなたが好きだった白い花。
どうしてだろう、手土産は
いつもこれしか浮かばない。



『終わってしまった運命に
 人は花ばかり手向けるね。』



あなたがよく口にした行為を
わたしもまた、あなたにする。
あなたは怒るかな。いや、
恐らく困ったように眉をよせて
優しくわたしに笑うのだろうね。



わたしの左腕に刻まれた
あなたの同情を誘った傷は
なまなましく
まだここにあるので



わたしはすその長い
服ばかり買うことで
交わした秘密の約束を
この世界から守った。



(あ、てがみ。)
なんということだ。
あなたへの手紙を。
15年間。
忘れたことなどなかったのに。



やはり逆らえないのか。
これまでの夜も。慈しんだ午後も。
生きる流れに押し潰されながら。
エネルギーはやがては冷えて固まるのだ。



あの時、
冷たくなっていくあなたを
わたしはただ見るしかなかった。
ようやく一言こぼれた言葉は
きっとあなたへ届かなかった。



それから数日して、
洪水のように溢れてきた言葉を
繋ぎあわせるように
捧げてきたのだけど。
その奔流も
とうとう終わるのだ。



土は冷たいのか。
それとも温かいのか。
終わりゆく時の流れに
わたしもまた凍えていくのだろうか。



わたしはまたここを訪ねる。
ここにあなたはいない。
知っている、花を手向ける。
わたしの中のあなたの陰も
少しずつほぐれて、乾いて
虚空へさらわれていくのを感じ
ゆっくり
目を閉じた。



『いつかあなたに同化する日まで。
変わってしまうわたしをどうか忘れないで。』





『愛していて。』





アンダー・ザ・クロス

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